すると、俳優の萩原流行さんが、ネコの着ぐるみを着て、なにやらしゃべっている。
その、あまりにありえない光景に、私は失笑してしまうところであった。
「時代は変わった、と思ってはいたが、
天下のNHK、その教育テレビも、時代の趨勢には勝てないのか」と
心で溜め息しつつ、チャンネルを換えようとしたのだが、
どうも、様子が違う。
そう、萩原さんは、絵本「100万回生きたねこ」を朗読しているのだ。
(Wikipedia「100万回生きたねこ」)
発刊間もない頃、私もこの絵本を読んだ覚えがある。
いかんせん、幼稚園に行くか行かないかの幼児であったから、
ストーリーを覚えることはできても、それの意味するところは分からなかった。
それよりも、ワハハ、と笑える内容の絵本を好き好んでいたものである。
しかし、この絵本、子供よりも大人に高い評価を得ていると言われることもある、
名作なのだ。子供の時にはなんとも思えず、「つまらない」部類のはずだったものが、
いま、こうして萩原さんの朗読を聴くと、それぞれのページが思い出されてくる。
記憶に深く焼きついていたことにも驚いたが、
何だろう、それ以前に、不覚にも涙ぐまずにおれなくなってきたのだ。
人が感動の涙を流すときって、どんなときだろう。
これはおそらく「邂逅」から来たものだろうか。
難解なパズルが解けたときに得られる感動とも違うようだ。
番組はとうに終わっており、テレビのスイッチも切っていたのだが、
結局、自分はどうして泣かずにおれないのか、
それが分からないでいる自分にまで泣けてきてしまった。
そして、「これっぽっちと言えば失礼かもしれないが、これほどのことで涙ぐむなんて。
自分には、もっと直接的に、感動すべきこと、感謝すべきこと、悩むべきこと、
悲しむべきこと、泣けてきて当然なことがあるではないか。
それには一滴の涙も流していないではないか」と猛省を迫られ、
余計に泣けてきたのである。
そして、「人が感傷的になるのって、結構簡単なんだねー」という
捨てゼリフともつかぬ感想とともに、またテレビをつけ、チャンネルを換えたのだった。
「ラジかるッ」に。
(人の気持ちって、長続きしないものですねー

